コンピュータ的な表現で云うと、日本人として国に登録されるためには、戸籍というデータベースに記録されなければならない。そして、日本の戸籍データベースの最大の特徴は、戸籍テーブルの1レコードに対して人テーブルの複数レコードがリレーションする構造にある。
……というと、なんのことだか判らないので日本語に直すと、日本人は戸籍単位で管理されていて、1つの戸籍の中に複数の人が記録されている状態にある。すなわちこの戸籍は概ね「家族」を指す。
そして俗にいう「入籍」とは、この戸籍=それぞれの家族から対象となる人(結婚する人)を外して、別の新しく作られる戸籍に入れなおす行為を指す。こうして生まれた新しい戸籍が新しい家族というわけだ。コンピュータ的な表現で云うと、戸籍テーブルに新しいレコードを挿入し、人テーブルの2人のレコードからのリレーションを張りなおす、となる。
つまり婚姻届を提出するためには、古い戸籍から自分たちを切り離して新しい戸籍のほうに持ってこなければならない。
戸籍は都道府県が管理している、例えば野村は北海道出身であるから北海道が管理している。もしも新しい戸籍も北海道に管理してもらうつもりならば、野村の戸籍に関する情報は比較的スムーズに移動できる。だが今回は、現在居住している東京都で手続きをするつもりだ。この場合は北海道から、戸籍に関する情報を一旦取り寄せなくてはならない。
そこで、「戸籍謄本」の入手である。戸籍謄本とよく似た「戸籍抄本」があるが、これは簡単にいえば戸籍の全部か、自分の情報だけが書かれた戸籍の一部かの違いだそうだ。普段、戸籍が必要となる場面においては、その人の戸籍がどこの都道府県に保管されているかなどが判れば十分なので、自分のことだけが書かれた戸籍抄本で事足りる。だが今回は戸籍を切り離す作業なので、戸籍全体が書かれた完全な状態の情報が必要となる。
戸籍謄本は郵便で入手することが可能だ。本籍地の市区町村の役所に問い合わせればよい。大抵の役所はインターネットにWebサイトを持っていて、入手方法を解説してくれている。請求書(残念ながら各役所によってバラバラ)をプリントアウトして必要事項を記載の上、手数料(今回の場合は450円分の郵便小為替だった)、返信用の封筒(住所を書いて切手を貼っておく)、そしてその住所に住んでいることを証明する免許証などのコピーの4つが必要だ。どうやらこの住所の証明には神経を尖らせているらしい。戸籍を不正な目的で入手する悪い人たちがいるそうだ。
あとは戸籍謄本が戻ってくるのを待つ。戸籍謄本は3ヶ月以内のものでなくてはならないので、もののついでだからと2通も3通も入手する必要はない。しかもこの戸籍謄本、最終的には過去の情報となるわけだ。