こうみえてもアートというかデザインというか、そういったものを追い求めていた過去がある。で、野村が学生だった時分にはまだデジタルカメラなぞ普及していなくて、写真といえば35mmフィルムを使用するアナログなカメラの時代だった。いやぁ撮りまくった。カラーだろうが白黒だろうが、ネガだろうがポジだろうが。
この頃の写真たちはプリントの有無に関わらず全てフィルムの状態では保管してあったのだが、非常にお粗末な保管状況(単に箱に詰め込んでいるだけ)なのと、いい加減お荷物になってきたのと、いつかはデジタル化しなければライブラリ管理が面倒だなと思ったので、遂にスキャニング作業を始めることにした。
幸いなことに我が家の一体型プリンタにはフィルムスキャンの機能が搭載されていて、2400dpiで取り込めるらしい。というわけで早速MacBookProにUSBでスキャナ繋いで、Photoshop立ち上げてTWAIN……、え?TWAINがない?
もう時代が違うんだね、今はスキャナメーカー純正のアプリ等を使ってスキャニングするほうが安定性が高いのでそちらを使用しろ、とAdobeのサイトには書いてあった(一応TWAINプラグインは配布されていたが)。なるほど、ではメーカーのアプリでスキャニングする。
普通のネガフィルムは写真屋さんによって6コマずつに切断されている。6コマをスキャニングするのにおよそ18分(1枚あたり3分)かかる。これは、気が遠くなる。36枚撮のフィルム一本分スキャニングするのに1時間半以上かかるわけだ。しかも35mmフィルムという小さな物体のスキャニングだから、糸くずなどのホコリがかなり拡大されてしまう。気を遣うのも疲れてしまいどうせ大した写真じゃないからいいや、と途中からはかなり投げ遣りな単調作業になっていった。
取り込んだ後も大変だ。これはiPhotoに取り込んだところでようやく気がついたことなのだが、EXIF情報があるわけじゃないから当然写真を撮った日付も場所も分からない。必死に記憶の糸を辿るが、20世紀の出来事なんてそんな詳細に思い出せる筈も無く。だが、こうやって古い写真を引っ張りだすと、一応記憶とリンクしている箇所もあったりして。感傷の話はさておいても、このレンズは24mmだったかなぁ、このボケはかなり意図的だったよなぁ、とか色々工夫して写真を撮っていたことを思い出した。
それにしても。
デジタルカメラの時代になって全く写真を撮らなくなったのは一眼レフを触る元気が出ないからだが、ではあの頃のカメラと何がどう違うのかと問われると、うまく説明できない。オートフォーカス前提の設計がなされている現代の一眼レフはレンズが重くて取り回しが厄介だとか、ディスプレイ上の情報が多すぎるとか。いや、それ以上の「何か」に嫌悪感を感じているような気もする。