今月観た映画の話(後編)

買ったのにずっと観ていなかった「イヴの時間・劇場版」をようやく観た。で、速攻でオリジナル版を買い足した。というのも、この劇場版を観て非常に面白かった、面白かった故にこの作品が元々6本の短編でそれを繋ぎ直したものだという点がどうしても展開の端々に影響を及ぼしているように思えたことが心残りだった。勿体ない、非常に勿体ない。吉浦監督作品の長編が観てみたい。

設定は非常にありきたりな、人間とアンドロイドが共存している時代の話。だが、メインの舞台を「喫茶店」という一カ所に絞ったあたりや、その若干レトロな雰囲気などが非常に好感が持てる。一人一人が身上を独白する展開などはまさに「舞台」。これがオチも含めて非常に効果的だったと思う(下手にカメラが外の世界と行き来すると、「イヴの時間」が持っている特殊性がおかしくなっちゃう)。こういうツボった作品が劇場作品の一作目なのかと思うと、どうしても次回作に期待せざるを得ない。と、思わずハードルあげてしまいますな。

そして劇場で観た映画は「ソーシャル・ネットワーク」。アカデミー候補で「英国王のスピーチ」と一騎打ちらしい(この日記を書いている時点ではまだアカデミー賞始まっていません)。この映画、良くある青春ドラマを超えた人間ドラマに仕上っていて、ネットの世界に詳しくない人が観ても十分楽しめるようになっている。逆にいえば、Facebookはストーリー上に全く関係がない。実話を元にしているということはむしろ謳う必要が無いのではないかと思えるくらいだ。そして考えさせられる。この映画を肴に何時間でも話が出来るのではないかと思えるくらいに、観たものに訴えかける内容になっていると思う。それが鼻白まざるを得ない部分でもあるが、まぁ映画の主旨から云えば、完璧な仕上がりだろう。

ただ、100点の映画かというと、それは違う。カタルシスが得られないからだ。映画に求める非日常、どこかフィクションであって欲しいと思う部分が、この映画ではちょっとずれているか、或いは無い。端的に云えば「難しい」。だからこそもう一回観たいという気分にもさせてくれるのだが。

さてさて、今月観た映画はこんなところ。ではまた来月。