5月に観た映画・激情編

もう6月が終わるというのに、5月に劇場で観た映画のメモを遺し忘れている。急いで書かねば!

まずは「ブラック・スワン」。云わずと知れたナタリー・ポートマン主演の、もう名作認定でいいよね、それくらいな作品。なにが素晴らしいってダーレン・アロノフスキー監督の前作「レスラー」同様、不器用に生きる人間をまっすぐに描く力強さと残酷さ(流血シーンがあるから、という意味ではなく現実や心情の残酷さ)が観るものを引き込んで離さない点が素晴らしい。俳優自身とストーリー上の主役の境遇の見事な絡み合い(いわゆる「アテ書き」)が、もう色々考えてしまってもう!って悶絶してしまうくらい。

次に観たのは「エンジェル・ウォーズ」。ザック・スナイダー監督が趣味丸出しで作ったといわれている作品。ざっくりと乱暴に野村の感じた印象を云ってしまうと「エンタメとしてよく出来ている押井守『アヴァロン』あるいは『アサルト・ガールズ』」。マンガやアニメ、特撮の影響を受けた演出がさすがザック・スナイダーだな、と。そしてダークな世界観が非常に美しい。で、トータルで考えると、うーん、このストーリーで一般受けは無理だよね、華がないもん。だからといってカルト映画というほど素っ頓狂でもない。そういう意味ではターゲットが判りづらい。本当に「趣味」の映画なんじゃなかろうか、と。

で、「星を追う子ども」。新海誠監督の最新作ということでアニメファンなら皆観たのではないかというくらいにオタク層で盛況だった。うん、いい作品なんだな。だが、新海誠監督が初めて挑戦したジュブナイルものということもあり、つまりはこれまで新海作品を支えてきたオタク層からの脱却を狙ったのではないかと思えるプロットで、これがなぜか既視感、もっと具体的にはジブリのオマージュじゃね?と思えるところが多々見受けられるに至った。表現やアクションなど随所に新海作品らしさは垣間見えただけに、特に素人目につきやすい登場人物の風貌やしぐさ、言動に既視感があるのが非常に残念でならない。オタクではない極めて一般な趣味をお持ちの方が観たらどう思うのだろうか。ともあれ、ジュブナイルものの王道はきちんとクリアしていると思うので、その意味では安心の新海ブランドを確立したなぁ、と納得できる作品。

ところで観客のほとんどがオタクだったと感じたのには訳があって。野村は池袋の映画館で観たのだが、本編開始前に戦隊ヒーローもの映画の予告編が流れ、そのとき会場が俄にざわついたからだ。おい、お前達、あからさまに反応し過ぎだ。