「げんしけん」とオタ文化と商業

「げんしけん」の6巻に同人誌が付いたものが、「特装版」として売られていた。ちょっと顔ぶれが興味深かったので買ってしまったが、この付録の同人誌を読みつつ、なんとも奇妙なクラインの壺に嵌った。

「げんしけん」はアニメや同人誌やコスプレといったオタク文化を非オタクの視点も交えて描いている作品で、いわば「楽屋ねた」に異業種からの視点を加えた「自虐ねた」のマンガといえる(それ以外に学園ものの要素もある)。まさしく、6巻の帯では「講談社漫画賞落選」というネタをかましている。自虐である。

その自虐マンガに同人誌が付いて、更に自虐度は増す。同人誌の主題のひとつはパロディーだが、「げんしけん」のパロディーをやるというのは「楽屋ねた」のパロディーなわけで、こんなねじれの構造に野村は感心したのだ。

マンガの「楽屋ねた」といえば島本和彦の「燃えよペン」があるが、こちらはプロの作家をパロディー化している。同人誌のようなパロディー主体のメディアではないからここから先のスピンオフは考えられない。だからこそなお「げんしけん」の同人誌は卑怯だなぁと思った。

何、力説してんだろ。ちなみに「げんしけん」の同人誌は、作家さんか本編に思い入れが無い場合はクソつまらない作品群なので(それこそが同人誌の魅力でもある、自虐的だが)、これを機に読もうと思っている方はくれぐれも注意が必要だ。