「HEAVY RAIN -心の軋むとき-」感想

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野村は普段はゲーム雑誌などを読まないので、ゲームの情報は友人経由かTwitterやブログ経由でしか分からない。このゲームが発売される直前、偶然店頭でデモ映像を観て、気になって情報を後から集めた。重い内容のアドベンチャーゲームだと分かり、昨今のゲーマーには全く響かないだろうが、個人的にはこれは買いだと思った。

80年代にアドベンチャーゲームがPCゲームの代表格だった時代があった。ターゲットの年齢層が高かったせいもあってか、シビアなリアルタイム処理が要求されない代わりにストーリー性が非常に要求されていたように思う。当時のアドベンチャーゲームのスタイルは、「弟切草」以降はサウンドノベル/ビジュアルノベルという名称で現在にまで引き継がれた(最近だと「428」など)。だが、システム的には大きな発展は観られず、単に「表現や作業が単調でつまらないゲーム」「一度クリアする(=ストーリーのオチを読み終える)と面白くなくなるゲーム」として完全に据え置き型ゲーム機(PCやWii/PS3/XBox)でのメインストリームからは引きずりおろされた格好だ。

昨年末DSで発売された「極限脱出 9時間9人9の扉」というゲームがあるが、これは「レイトン教授シリーズ」のような謎解きパズルのパートとアドベンチャーゲームをくっつけた格好であるから、アドベンチャーゲームとしては従来のスタイルの延長線上にあるといってよいだろう。DSでは他にも従来のスタイルのアドベンチャーゲームがいくつか出ている。DSの処理能力やプレイスタイルを考えれば、またDSはユーザーの年齢層が幅広い(アドベンチャーゲームのオールドファン層は据え置き型ゲーム機の年齢層よりも、むしろDSの年齢層に合致すると思う)ことを考慮すると、まだまだDSではこのスタイルでやっていけるのかもしれない。

さて、「HEAVY RAIN」はストーリーをユーザーに与え続けながら、要所要所でユーザーにリアルタイムな判断を迫るという、据え置き型ゲーム機でのプレイをターゲットにした比較的新しいスタイルを採用している。従来のスタイルで指摘されていた文字を読み続ける作業の単調さや気怠さは払拭できていると思う。むしろストーリーに見入ってしまって、考える時間を与えてくれないリアルタイムな判断を迫られるシーンのほうが面倒なくらいだ。

このスタイルのアドベンチャーゲームは他にも、やはり同じ開発会社から出された「Fahrenheit」などがある。だが、このスタイルのゲームは、果たして思ったように売れているのだろうか。

「HEAVY RAIN」はグラフィックにも、音声にも(吹き替えにも)相当の予算がつぎ込まれていると予想される。つまり、それなりに売れなければこんな規模でゲームを作り続けることは不可能なはずだ。だからといって、「ストーリーをユーザーに与え続ける」ことがこのスタイルのアドベンチャーゲームの特徴であるから、ストーリーに必要なレベルの表現を作り込んでいく予算を削るわけにはいくまい。

更に「HEAVY RAIN」ではなおも「一度クリアすると二度目をプレイするモチベーションが湧かない」という問題が完全には払拭できていない。マルチエンディングであることだけではゲームをプレイするモチベーション向上には繋がらず、単なるコンプリートのための作業を繰り返すだけになってしまう。特に内容が重かっただけに二度目をプレイする感情が湧きづらい。また野村の場合は、一周目でかなりストーリーが気に入ってしまったために、違う展開自体に興味が湧かなかった。二度目のプレイがなされないとなると、相当に力が注ぎ込まれた表現が、単に映画のように繰り広げられただけということになってしまう。これは非常にもったいないことではないだろうか。

というわけで、「HEAVY RAIN」。野村はとても好きな内容だったが、ゲームとして考えるとどうなんだろう、売れるといいが難しいんじゃなかろうか。ただ、だからといってアドベンチャーゲームが無くなってしまうのは非常に惜しいので、なんとか生き残りをはかってもらいたいものだ。