2011

2011-02-28 今月観た映画の話(後編)

買ったのにずっと観ていなかった「イヴの時間・劇場版」をようやく観た。で、速攻でオリジナル版を買い足した。というのも、この劇場版を観て非常に面白かった、面白かった故にこの作品が元々6本の短編でそれを繋ぎ直したものだという点がどうしても展開の端々に影響を及ぼしているように思えたことが心残りだった。勿体ない、非常に勿体ない。吉浦監督作品の長編が観てみたい。

設定は非常にありきたりな、人間とアンドロイドが共存している時代の話。だが、メインの舞台を「喫茶店」という一カ所に絞ったあたりや、その若干レトロな雰囲気などが非常に好感が持てる。一人一人が身上を独白する展開などはまさに「舞台」。これがオチも含めて非常に効果的だったと思う(下手にカメラが外の世界と行き来すると、「イヴの時間」が持っている特殊性がおかしくなっちゃう)。こういうツボった作品が劇場作品の一作目なのかと思うと、どうしても次回作に期待せざるを得ない。と、思わずハードルあげてしまいますな。

そして劇場で観た映画は「ソーシャル・ネットワーク」。アカデミー候補で「英国王のスピーチ」と一騎打ちらしい(この日記を書いている時点ではまだアカデミー賞始まっていません)。この映画、良くある青春ドラマを超えた人間ドラマに仕上っていて、ネットの世界に詳しくない人が観ても十分楽しめるようになっている。逆にいえば、Facebookはストーリー上に全く関係がない。実話を元にしているということはむしろ謳う必要が無いのではないかと思えるくらいだ。そして考えさせられる。この映画を肴に何時間でも話が出来るのではないかと思えるくらいに、観たものに訴えかける内容になっていると思う。それが鼻白まざるを得ない部分でもあるが、まぁ映画の主旨から云えば、完璧な仕上がりだろう。

ただ、100点の映画かというと、それは違う。カタルシスが得られないからだ。映画に求める非日常、どこかフィクションであって欲しいと思う部分が、この映画ではちょっとずれているか、或いは無い。端的に云えば「難しい」。だからこそもう一回観たいという気分にもさせてくれるのだが。

さてさて、今月観た映画はこんなところ。ではまた来月。

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2011-02-27 今月観た映画の話(前編)

まずはレンタルした8本から。

「特攻野郎Aチーム THE MOVIE」。実はTVシリーズのほうを観たことが無くて(当時の我が家では、その時間は別の番組を観ていたんだと思う)ほぼ知識無しの状態で観た。なるほど、このシリーズは能力の無駄遣いっぷりが痛快なのですね。おバカで痛快、ぐっときました!映画館で観たかった!

デンゼル・ワシントン主演「ザ・ウォーカー」。世紀末救世主ものということで、拳法を使わない「北斗の拳」という印象。絵の過激さじゃなくてテーマがすごく近い。結構真面目に作ろうとしていて、つまりはやりすぎでクサいストーリー展開に、特に宗教的背景が違いすぎる日本人は思わず白けるだろう。が、野村は敢えて「よく頑張った」の及第点。映画としては残念だったのは興行成績でも明らかなので云うまでもないが、定期的に出てくるこの手のテーマの映画は中では気に入ったほう。

アンジェリーナ・ジョリー主演「ソルト」。ラスト以外はとても楽しかった。二転三転するストーリー!という触れ込みだったから、むしろ二転三転するところに驚きが無かったというのが残念。事前情報無しで観たかったなぁ。途中までは社会派サスペンスっぽさがあるのだが、そこはそれ、結局ただのフィクションだから。あと、皆がいうほど野村はアンジェリーナ・ジョリーが好きじゃないということで評価辛め。

キャメロン・ディアス主演「運命のボタン」。押す、押さないの心理戦かと思ったらテーマが別のところにいっちゃうのね、なんじゃそりゃー。後半なんか蛇足以外の何ものでもない。個人的に頭に来たのがキャメロン・ディアスの役は足が不自由という設定で、これが心理に深く関わってくるのかと思ったら中盤に台詞でさらっと説明して終わっちゃうところ。まさかそれだけじゃないよね、と思ったらそれだけだった。ひょっとして野村が何か見落としたかも知れないが。なにせ後半はつまらなくて半分寝ていた。

M.ナイト・シャマラン監督、お前がなぜファンタジーを撮る!という「エアベンダー」。監督の名前を忘れて観るべきだった、全くもってファンタジー。そして、微妙。例によって原作未見なのだが、今回の映画は大きなストーリーの中の第一章だけらしいのでストーリーが未完。ストーリーはこのあと面白くなりそうな気配があるのだが、興行的には次を作れそうなんだろうか、どうすんだろうねぇ、と心配になる。

ジュリアン・ムーア主演「シェルター」。感想を書く前にレビューサイトをちらっとみて……、やはり酷評か。見所その一は、この映画はフィクションであることを主人公自身が冒頭で言い切っちゃう点。多重人格はフィクションの世界だけです、と言い切っちゃうところね。作った側からするとニヤリとする仕掛けのつもりだろう。見所その二は救いの無いストーリー。観た人全員がツッコミ入れると思う。そして宗教もの(悪魔憑き)なので日本人には向かない、と。

アニメ「ヒックとドラゴン」。日本での宣伝に芸人を使っていたせいで野村の中では最低クラスのマイナス評価からの視聴。いや、面白いじゃないか。ジュブナイルはこうでないと。ちゃんと主人公は成長するし、仲間は……描写足りなすぎるけどまあまあいるし。そしてドラゴンたちが魅力的で、もっとドラゴンたちを推しても良かったんじゃないかと思うくらい。あの宣伝のせいで観たくないと思っているかたは、損をしている。

北野武監督「アウトレイジ」。問答無用のバイオレンスアクション。その手のが嫌いな方にはお勧めできないが、日本でギャングもの映画の歴史に残るかも知れないくらい、すごく盛り上がる映画。続編が今年の秋に公開予定ということだが、このラストからどうやったら続きが作れるのかという点も非常に注目。

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2011-02-18 アナログ写真を全部スキャニングしちゃう計画

こうみえてもアートというかデザインというか、そういったものを追い求めていた過去がある。で、野村が学生だった時分にはまだデジタルカメラなぞ普及していなくて、写真といえば35mmフィルムを使用するアナログなカメラの時代だった。いやぁ撮りまくった。カラーだろうが白黒だろうが、ネガだろうがポジだろうが。

この頃の写真たちはプリントの有無に関わらず全てフィルムの状態では保管してあったのだが、非常にお粗末な保管状況(単に箱に詰め込んでいるだけ)なのと、いい加減お荷物になってきたのと、いつかはデジタル化しなければライブラリ管理が面倒だなと思ったので、遂にスキャニング作業を始めることにした。

幸いなことに我が家の一体型プリンタにはフィルムスキャンの機能が搭載されていて、2400dpiで取り込めるらしい。というわけで早速MacBookProにUSBでスキャナ繋いで、Photoshop立ち上げてTWAIN……、え?TWAINがない?

もう時代が違うんだね、今はスキャナメーカー純正のアプリ等を使ってスキャニングするほうが安定性が高いのでそちらを使用しろ、とAdobeのサイトには書いてあった(一応TWAINプラグインは配布されていたが)。なるほど、ではメーカーのアプリでスキャニングする。

普通のネガフィルムは写真屋さんによって6コマずつに切断されている。6コマをスキャニングするのにおよそ18分(1枚あたり3分)かかる。これは、気が遠くなる。36枚撮のフィルム一本分スキャニングするのに1時間半以上かかるわけだ。しかも35mmフィルムという小さな物体のスキャニングだから、糸くずなどのホコリがかなり拡大されてしまう。気を遣うのも疲れてしまいどうせ大した写真じゃないからいいや、と途中からはかなり投げ遣りな単調作業になっていった。

取り込んだ後も大変だ。これはiPhotoに取り込んだところでようやく気がついたことなのだが、EXIF情報があるわけじゃないから当然写真を撮った日付も場所も分からない。必死に記憶の糸を辿るが、20世紀の出来事なんてそんな詳細に思い出せる筈も無く。だが、こうやって古い写真を引っ張りだすと、一応記憶とリンクしている箇所もあったりして。感傷の話はさておいても、このレンズは24mmだったかなぁ、このボケはかなり意図的だったよなぁ、とか色々工夫して写真を撮っていたことを思い出した。

それにしても。

デジタルカメラの時代になって全く写真を撮らなくなったのは一眼レフを触る元気が出ないからだが、ではあの頃のカメラと何がどう違うのかと問われると、うまく説明できない。オートフォーカス前提の設計がなされている現代の一眼レフはレンズが重くて取り回しが厄介だとか、ディスプレイ上の情報が多すぎるとか。いや、それ以上の「何か」に嫌悪感を感じているような気もする。

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2011-01-31 1月に観た映画

なんだかクソ忙しいので映画を観る体力もかなり持っていかれてしまっているが、それでも宅配レンタルは律儀に8枚送ってくるので観ねばならぬのであった。

CGアニメ「9 ~9番目の奇妙な人形~」。キャラクターのパペットっぽいデザインがかわいい……のかな、とにかく表情が好き。内容は典型的な子供向け冒険ものなので(深みが感じられないのが残念だ)、ストーリーよりもキャラクターや世界の造形を楽しむべし。絵柄はまぁまぁといったところか。

ジェニファー・リンチ監督「サベイランス」。実は猟奇殺人ものだと知らずに観たのでちょっと凹んだ。というかね、サスペンスだと思ってじっくり観ていたら実は大した推理が要らなかった(ネタバレすんません)というね。リンチさん家の方々はこういうのが好きなのですかね。野村は普通の感性の人間なので、サスペンスならもう少し「サスペンド」させて欲しいですわ。

「アイアンマン2」。ネットとかで感想を読むと前作よりも評判が良いが、個人的には「1」と比べて展開がベタに感じられて少々残念な印象。アクションはバツグンなので、それだけで何度でも観たくなる映画であることは間違いない。2作続けて観るとぐっと来るのかも。

サンドラ・ブロック主演「しあわせの隠れ場所」。実は実話です、感動の実話、泣ける、アメリカンドリーム!……なるほどねぇ。確かに「良い話」なんだが、人間の感情のエグい部分がまったく描かれていなくて、今ひとつ登場人物たちが好きになれない。「いい人」過ぎる。登場人物がちょっとだけ茶目っ気を出すように自分の暗部を告白したりするが、「そんなきれいごとを!」と言いたくなる。サンドラ・ブロックの演技が素晴らしいという感想を見かけたが、そんな理由によりあまり「演技」に注目できなかった。

安全安心エンタメ命でおなじみ、ジェリー・ブラッカイマー印の「プリンス・オブ・ペルシャ/時間の砂」。見所はもちろんアクションなのだが、ゲームが原作ということでゲーム上の設定(屋根の上を走り回ったり、「時間の砂」を使ったり)がメインで使われているので、これが納得できれば楽しい。

ボーンシリーズのチームが作ったというマット・デイモン主演「グリーン・ゾーン」。ちなみにボーンシリーズは第1作目で深き眠りに落ちたために以降の作品も観ることが出来ず、なんでボーンシリーズは人気があるのか自分には検討もつかず。で、この作品の見所は前半で、大量破壊兵器を探す緊張感が高い場面が続いて、マット・デイモン含め兵士たちの緊張と疲労が観ているこちらにも伝わってくる感じがすごくいい。反面、後半のマット・デイモンが何故か探偵ごっこ始めて、しかも役に立っていないというあの間抜けっぷりはどうなんだろう。オチるものもオチていないまま終了。後半全部書き直してくれー!と言いたくなる。

またしても伊坂幸太郎原作の「フィッシュストーリー」。伊坂幸太郎なので例によって「中二病」なストーリー。映画的には「ゴールデン・スランバー」よりこっちのほうが面白かった。それが決して多部未華子ちゃんが出ているからではなくて、複数のストーリーが絡むという「映画的なプロット」が気持ちよかったから。だが、2012年パートの気持ち悪さはちょっとないなぁ。役者さんのせいじゃなくて演出のせいだと思う。あと、1975年パートの主人公を演じた伊藤淳史が主演扱いな理由が分からない。複数のストーリーが絡むから面白いのになぜ1975年パートだけ特別扱い?まぁ日本国民は多部ちゃんが出ているというだけで観るべき。

高橋玄監督が様々な実例を基に警察の暗部を描いたという触れ込みの「ポチの告白」。3時間を超える長さを感じさせない濃厚な警察ドラマで、いかにも低予算な感じが途中ありつつも、ラストまでグイグイと観ている人を引っ張ってくれる。だが、観終わってみて最初に思ったのは「これはフィクションだ」ということ。そこが惜しいというか、なぜ「フィクションだ」と観客に気づかせてしまったのかが気になる。例えば周防正行監督の「それでもボクはやってない」の観客をバーンと突き放したラストと比べて、どうだろうか。

あと劇場で「相棒II」を観た。前の劇場版と比べて一転、ダークなストーリー展開。そして相棒ファンは観なければ次のシリーズが楽しめないだろうと思われるストーリー展開。これはずるい。ファンは観るべし。ファンじゃない方はまずは普通にTVシリーズを。劇場版はTVシリーズファンのための作品なので。

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2010

2010-12-29 12月に観た映画の話をしよう(3)

年末なのでTVでも色んな話題作を放映し始めた。それは嬉しいのだが、とてもじゃないが観ている時間がない。録画しておいて時間があるときに小出しに観るしかない。その点においては実は、途中でCM中断が挟まれる現在の民放の放送スタイルはむしろ有り難かったりもする。録画で観ているから、CMは飛ばしてしまうんだけどね。なんだか矛盾しているが、事実なので仕方がない。

さて、「ライラの冒険 黄金の羅針盤」。原作は全3部作らしいのだが諸般の事情によりこの第1部より後の映画化の話は無くなってしまったらしい。オーソドックスなファンタジーの世界観で、既視感と戦わねばならない部分も多々あるが、まぁすんなり物語にはのめり込めた。ただ、色んな謎を秘めたまま終わるエンディングだったりもするのだが(前述の通り物語自体には続きがあるため)、その割に強大な何かとか世界の生い立ち的な何かとか、そういった類の壮大な裏テーマみたいなものは全く感じられず。近年はファンタジー映画が若干乱立しているだけに、他の作品との比べるとインパクトが薄いなぁ。

そして紀里谷和明監督「GOEMON」。キター。もうね、観る前から「この映画はヒドイよ!」と分かっていたので、逆に安心して観ていられた。ストーリーがもっと希薄なほうが良かった。下手にストーリーやテーマがある風なウソを付かないで、割り切って「かっこいい絵だけで映画作りたーい」と言い切っちゃったほうがいいと思う。良くも悪くも日本で(世界で?)このテイストの絵作りが出来るのは紀里谷しかいないわけで、もうそれだけで押したほうがいいと思う。もっとアクションシーンだらけにして、なんならR-15指定にして血しぶきとか出しまくって、もう「絵だけです!」という映画にしたほうが観ている人にも何がやりたいのか伝わると思う。尺も半分でいい。

で、映画館に観に行った作品が「キック・アス」。R-15指定なので血しぶきとか残虐な殺戮シーンが苦手な方はちょっと覚悟したほうがよいが、オススメしたい。ヒーローに憧れる主人公が本当にヒーローになっちゃうというアクション・コメディで、映画全編にヒーローものの映画やコミックに対する愛が感じられる。映画が好きな人が映画好きのために作る映画とか、アメコミ好きがアメコミ好きのために作るアメコミとか、もうピュアすぎてイノセンスすぎて。ヒットガールにシバかれたいと思っちゃうわけですよ。

とりあえず今月はこれで映画は打ち止めかなぁ。年末にまだ観られる機会があるかも知れないが、とりあえずここまで。

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