世界遺産のある国(3)
1992年に世界遺産となったアンコール遺跡は、壊滅しかけています。何百年もの歳月が、積み上げた巨大な石造物を砕こうとしているのです。
遺跡は壊れていくばかりです。放っておけばいずれ崩れ落ちてしまうでしょう。でも、だからといってコンクリートや鉄骨で補強しても興ざめです。さて、どうしたものか。日本チームは、崩れそうなところの石をどけて、きちんと積み重ならなくなった石は同じ素材の石を同じ形に彫って、もう一度積み直しています。まあ、スケールの大きなジグソーパズルってことでしょうか。新しい石は彫刻なども復元するのですが、憶測で昔の形を復元してもだめだろうということで、現在残っている彫刻などと違和感無く解けこむように注意をはらったそうです。
遺跡を修復する、という行為は深い意味を持っています。単に人類文化の遺産を守っていくというヒロイズムではなく、なぜ直さねばならないのかから問い直していかねばならないからです。もしかしたら自然の成り行きにまかせ、朽ちてゆく姿を後世に残すことにこそ意義があるのでは?などと考えてみてください。もしくは、観光客が来て危ないから立ち入り禁止にしてしまおうとか、鉄骨で通路を組んで安全性に注意を払うとか、どんなプロジェクトでもこのような意見は必ず発言され、場合によってはそれが採択されています。決して間違った意見ではないのです。
さて、どんな観光地でも「勘違い野郎」はいます。アンコール遺跡でも、夕日を観ようと登ってはいけない小屋の屋根に登る人々などをみかけました。何年か前に遺跡修復のプロジェクトに参加していたテリーさんは、敢えて何も言おうとはしませんでしたが、その人々をみていました。 |