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坂本龍一 「ウラBTTB」の巻(1999/10/06)

 ピアノ・インストが『POPS』や『ROCK』と書かれた棚に並んでいるだけでも奇妙なのに、オリコンチャートで1位を取っちゃったりするのだから教授はすごい人だ。CMソングだから?いやいや、それだけで1位はとれないでしょう。教授だから?いやいや、教授のシングルって結構コンスタントに出ているのに、他の作品はこんなに売れていない。
 YMOの三人は誰を見ても「策士」だなあ、と思ったのはいつの頃だったか。今回も、CDのオビにある「ごめんね、教授」の文字に僕は笑ってしまった。オビの向こうでニヤリと笑う教授が見えるようで仕方ない。
 さて、マキシシングルという形式の「ウラBTTB」だが、みんなの期待は1曲目の「Energy Flow」にぎゅっと集まっているのだろう。3曲ともピアノ1発録りであるが、特に「Energy Flow」にはこのバージョンしか存在しないのだ。で、聴いてみると納得できるくらいに、ソロピアノ曲としての完成度が高い。
 テクニックの要る曲ではないが、テンポの保ち方が難しそうに感じた。早すぎず、遅すぎずの心地よさ、揺らぎを描ききれるかどうかが演奏のポイントだろうか。特に教授の楽曲全般に言えるが、和声の存在感や浮遊感を耳で理解していなければ、聴衆ばかりでなく演奏者にとってもつまらない曲になるのだ。
 この曲の「解釈」について、いろんな意見を友人が語る。面白かったのは、「癒し」と評されることの多いこの曲を、「悲しい」と表現した方がいたことであった。これは正しいと思う。悲しいまでに美しいコード進行である。教授っぽさがたっぷりの、マイナー進行である。そうか、「癒し」は「悲しみ」を「理解」することでもあるのだろうな、なんて哲学めいたことも思ってみたが、その辺は聴き手の自由でしょうな。
 ところで、この曲はCMソングだが、僕はあんまりTVを観ないのでその辺の事情はどうでも良かったりする。

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