2012

長いお休みをいただきます

2011年の末日を以て、それまで3年間勤めていた会社を退職した。

これまで多くの方々に応援いただいたことに、そして自分は非常に恵まれていたことに感謝してもし足りない。本当にありがとうございました。

で、なんで辞めるのか、と。

自分では一所懸命走っていたつもりでも、いつの間にか周回遅れになっていたと分かったからだ。

Web業界、そしてインターネット業界、IT業界、言い方は色々あるがともかくその界隈の技術進歩は非常に早い。実力のあるプレーヤーたちは先頭を突っ走り、あるいは孤高になり、またあるいは全く新しい潮流を生み出したりしている。ひとりふたりじゃない、多くの方が多くの可能性を見出して、毎日のように何かを作り出している。そんな中で、中途半端にWebやアプリを作っていても話にならないし、一つの技術を横展開していくだけでは越えられない壁にひっかかるばかりだ。

スゴいプレーヤーの方々と自分を比べるなぞおこがましいと分かっちゃいるが、それぐらいの気概がないと平凡なプレーヤーとして業界に留まるのだって難しいんじゃなかろうか。なにせこの業界、プレーヤーの数が非常に多いのだ。毎年どんどん若いプレーヤーが参入してくるのに、業界自体も若いもんだから隠居して去っていく方の数はそれほどない。

年齢を考えれば、この遅れを取り戻すタイミングはもうそんなに残されていないと思ったのが、今このタイミングで退職する理由だ。

次の職場は自宅だ。しばらくは独りで、この周回遅れの状態を挽回すべくもがいてみることにした。

そんなわけで「長いお休み」と称して数ヶ月は商行為から離れようと思う。自宅(あるいはノマドとして都内のどこか)に籠もって、自分の作品といえるものをいくつか作ろうと思う。

それから後は、生きていくための幾ばくかのお金を稼ぐために、厚かましくもフリーランスとしてお仕事をいただこうかと考えている。もっと厚かましくも、ご縁があればいつかまたどこか組織に属させてもらうかも知れない。

とにかく先のことは分からない。なにせ周回遅れなので。少しでももがいた後に、何か見えてきたらそのとき考えることにしたい。

こんな困ったおっさんですが、今年もよろしくお願いします。


2011

これからのFlashについての雑感(2)

妄想全開の続き。

さてさて、HTML5だ。

AdobeはHTML5も積極的に推していく方針であることをしつこいくらいにアピールしている。実際にAdobeは自社ツール群を、Flash ProでさえもHTML5のオーサリングツールとして魅力的なものとしていくとのことだ。この方針修正は非常に納得がいく。プロ仕様の最強オーサリングツール群を有しているAdobeならHTML5対応は当然、むしろ使命といってよいと思う。

では開発者側はどうか。

クライアント企業やエンドユーザーが「スマートフォン」で「Webサイト」を閲覧するのであればHTML-CSS-JSというWebKit向け実装の一択で決まりだ。現在のWeb業界においては、スマートフォン向けWebサイトは絶対に制作しないという覚悟があれば別だが、そうでない限りはHTML、CSS、JSは習得しなければならないということになる。高度な技術力を武器にFlash一本で勝負できるという自信がないならば、飯の種としてのHTML5を早いとこ習得した方がいい。もっといれば、Flashに対して高い技術力を発揮できる技術者ならばHTML5もなんなく乗りこなしてしまうことだろうから、どう転んでもHTML5はみんなが使えて然るべき技術になる、くらいに考えるべきだ。

ではFlashの未来はゲームばっかりなのか、否、そう悲観することもない。

今一番のFlashのアドバンテージは、アプリを開発できるという点にあると思う。AIRはデビュー当初の印象がいまひとつぱっとしなかったせいでネガティブな評価をされる方が多いようだが、そういう方にもスマートフォンを前提にして改めて考えみてほしい。

まずアプリがWebアプリ(HTML5と考えよう)と比べて開発コスト、運用コスト、セキュリティ、パフォーマンス、使い勝手の面でどうか、そしてアプリの中でもC言語系、WebKit系、AIRなど異なる実装方法にがある中で開発コスト、運用コスト、パフォーマンスがどう違ってくるのか。

ばっさり途中を割愛するが、AIRによるアプリ開発がベターあるいはベストなチョイスとなる局面は少なくないと野村は考えている。

Webプロダクションの在り方としては、ある一定レベルまでのHTML5への注力を前提に、AIRによるアプリ開発の研究をするというのがいいかもしれない。

他にもFlex frameworkってどうなるんだろうとか考えたかったが、自分も勉強し直さなければついていけない部分が多いので、妄想でも語るのは無理だと断念した。

何かの考えるヒントになれば。


これからのFlashについての雑感(1)

先日、Adobe主催のFLASH MEETUPというイベントが行われ、野村も参加してきた。これが、Flashの開発チームと200人強のFlash開発者たちの質疑応答が4時間にも渡って繰り広げられるという、なかなかにアツいイベントであった。

で、そこで話さていれた内容などをもとに、久々に妄想全開で私見を書いてみることにする。

まずは「モバイル環境のブラウザ向けFlash Playerはもう作らない」という件。そう、先月来、Flash業界はもちろんHTML界隈の方たちまでもがざわざわっとなった、あの件について。

「スマホだとWebじゃなくてアプリですよね」というAdobeの弁も理解できるが、今となって考えるとモバイルブラウザにプラグインを載せるという、アプリの機能をプラグインで建て増しするという発想自体が噛み合っていないな、と思う。なので、これは仕方の無いことだろう。

一方で、PCブラウザ向けのFlash Playerはまだまだ終わらないわけで。正直それもどうなのだろう、プラグインという文化はいつまで続くんだろうか。ブラウザはOSじゃないのだから、ある程度のところで限界はくるんじゃないかと思う。少なくともあと2年くらいはなんとかなってくれるとは思うが、次世代OSが登場してもまだプラグインの文化が残るとは断言できないんじゃなかろうか。

次に進化の方向性について。

現在のFlash Playerの強化方向は「Gaming & Advanced Video」だそうだ。Adobeは「それだけに特化するという意味ではない」とも云っているが、さりとてゲームとビデオ以外の特定分野のための特別な何かを用意している、というわけでもない。「ゲームとビデオみたいな高いパフォーマンスが求められる分野で戦えるレベルにするから、みんなゲーム以外のことにもその力を使ってね♪」と。だが、ゲームなどという分かりやすいメッセージを発信してしまっていることを考えると、ここはAdobeさんには「違う使い方もあるよ!」というメッセージも宣伝して欲しいところ。そのためには恐らく事例が必要だ。つまりニワトリが先か、タマゴが先か。うーむ、とにかく開発者たちよ、頑張ってくれ。はい、頑張ります。

新しい技術の話をすると、現行のFlash Player 11の目玉機能である Stage 3Dとか、AIR 3の目玉機能であるNative Extensionとか、さらには次期Flash PlayerからはAlchemy 2(C/C++で書かれたコードをFlash Player内で動かす技術)も搭載されるとか。どれもこれも、これまでのActionScript3.0の枠を超えちゃっている。市販の乗用車とレース仕様車くらい違う。

つまり、パフォーマンスは圧倒的に高くなるが、扱いづらさもこれまでの比ではない。

AS3.0を必死に覚えましたレベルのドライバーでは、ライブラリ等でレース仕様車に由来するなにがしかの恩恵は受けられても、残念ながらレース仕様車自体には乗れない(かくいう野村も、このレース仕様車を乗りこなせる自信は無い。頑張って乗るつもりだが、大ケガしたとしても誰も骨すら拾ってくれないだろう、……おっかない世界じゃよ……)。

当然、そんなスペックは求めていない、高速道路には乗らずに一般道を走るドライバーだってたくさんいることだろう。こちらはこちらでこれまで同様、価格競争のただ中で頑張っていただくしかない。今後は技術者も減ると思う(HTML5へ移行していく)が、案件も減る(同様にHTML5へ……)だろうし単価は下がることはあっても上がることはないからだ。

長くなりそうなので、一旦ここで休止。


自炊はじめました

実は我が家には書斎はおろかPCデスクがない。独身時代からこたつをメイン作業スペースとして使ってきたからだ。

だがしかし、いい加減腰より上の高さのきちんとした作業スペースを確保しないと、大人としてどうかと思われる。

PCデスクを買おう。

そこで、自炊である。

なんつったって、PCデスクを置くためのスペースがないのだ。マンガも含め、我が家の本はすでに本棚には収まっていない。買ってきた本は基本的にもう床に積むしかないのだ。検索性は最悪。保存状況も悪化の一途をたどる。痛む、汚れる、読んだかどうかすら忘れる。最後のは本の管理とは関係がないが。

その点、電子化されてしまえば。PDFなら、タイトル順にきれいに並んでくれるし、これ以上痛まないし。

唯一、本をきれいに読み取るために裁断せねばならない点が心苦しい。だが、じゃあ今の保存状況はどうなのだ。きれいに裁断してあげたほうがいっそのこと……。

というわけで、いわゆる自炊派の人たち御用達のページスキャナ、ScanSnap S1500を購入した。さすがはページスキャナ、はやいはやーい。読むのにあんなに苦労した技術書たちが、あっという間にPDF化されていく。

ただ、出来上がりにはあまり満足していない。さすがに「スキャニングしましたよー」という質感はどうしようもないし、日本語OCRだっていくら性能が上がっているとはいえ100%なわけがない。特にプログラムの本は日本語と英語が入り交じるから酷い。肝心のプログラムの部分は空白含めて本来ならば一文字だって間違って欲しくないのに。それこそ、折角の電子化なのに。

電子書籍の流通に関しては未だ誰しもが暗中模索だが、技術的にはもう何年も前に確立されているんだから、もどかしいったらありゃしない。消費者視点でぶっちゃければ、単に意地悪されているだけにしか思えない。もう21世紀だぜ、おい。

……などと愚痴をいいながら、せっせと本を裁断する日々が続いている。ベストプラクティスじゃないと分かっているのに、裁断する。この無駄さ加減。あぁ、21世紀。


最近借りてみた邦画

立て込んでいたのにかこつけて日記を書かないでいたら、一ヶ月以上間が開いてしまうだなんて!

ちょっといくらなんでも酷すぎる。というわけでとりあえずこの二ヶ月近くで借りたDVDの中から邦画2編の感想を記そう。

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妻夫木聡、深津絵里主演の「悪人」。監督は「フラガール」の李相日ということで、後から考えてみると確かに人物の息苦しさ、暮らしの辛さみたいな描写が好きな監督さんなんだな、と思えた。物語自体にはちょっと驚きも共感もできなかったが(特に物語の後半はサスペンスでもなんでもないので)、役者陣は素晴らしいと思った。それ故に、もっとストーリーでも魅せて欲しかったなぁ。相変わらず原作未見。

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園子温監督作品を観てみたいと思い、最近ご贔屓の満島ひかりが出ているという理由で「愛のむきだし」に挑戦。237分……、さすがにあっという間とは言わないが、これでいい!大満足!これが愛、これがボーイ・ミーツ・ガールですよ!「この物語は実話を元に……」云々という前口上なんかぶっ飛んでしまう虚構さ加減と、盗撮シーンのくだらなさ、それでいて心に迫る主人公の感情。とにかく疲れる映画で嫌いな人も多そうだが、野村はもう一回観たいと思ってしまった。

同じく園子温監督の「冷たい熱帯魚」も観たが、個人的には無軌道な明るさを感じる「愛のむきだし」の方が好きだった。「冷たい熱帯魚」は世界が閉じていくような話の展開だったので、先に観るなら「愛のむきだし」の方が断然おすすめ。