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第38回「パソコンなんていらない」(2000/06/13)

 この頃になっても、僕に「どんなパソコンがいいんだろうか」と聞いてくる人がいる。芸術系の大学なので映像編集やらCGやらに使いたいという人も多い。なるほど、世間はパソコンを必要としているかのように見える。
 だが、騙されてはいけない。現在のパソコンは、決して素人向けに作られた至れり尽せりなものではない。WindowsやらMacintoshやらが「使い勝手のいい」ものであると評価されるのは「従来のコンピュータと比べて」だということを。
 元々、コンピュータは庶民のための機械ではなかった。ある程度の熟練を要する特殊な工作機械である。その応用範囲がとても広くて魅力的であることから、ちやほやされているにすぎないのだ。
 ワープロとパソコンの違いは何だ?と一昔前は言われていた。万能選手であるパソコンに対して、ワープロの方が印刷結果も使い勝手も便利であった時代が少なからずあったことを忘れてはいけない。例えば現在、パソコンでTV番組の録画ができるようになった。だがこの技術は、現在はまだ使い勝手の面でVHSを追い抜くことができずにいるのだ。高い将来性を謳う人も多いが、将来は現在のものよりもっと性能の良いパソコンが出ていることを忘れてもいけない。

 パソコンは使い勝手がとにかく良くない。パソコンの歴史上最も巨大なレガシーデバイスであるキーボードなどがその最たる例だ。また、未だにクラッシュが起こるという不完全な状態のOSが、しかもいじれてしまい壊すことも可能であるという無防備ぶり。インターフェイスに至っては、「この表示を覚えなさい」という大名商売である。電源を入れたら一番最初に表示されるのが「作業場」であるというのもこっけいである。
 パソコンを使っている人間にとって、現在のパソコンはとても便利のいいものになった。だが、それはパソコンが広く世間一般の人に受け入れられるということと同義ではない、と言いたい。

 でもね、パソコン、大好きなのよ。だからこそ、これからパソコンを始めようと思っている人には覚えていてもらいたいわけだ。パソコンは、将来的にはまた昔のように、オタクたちがウヒウヒいう装置に戻るのだということを。インターネットはインターネットアプライアンスが、ゲームはゲーム機が、デジタルムービー編集は編集機が出てくるようになるさ。だからね、今のパソコンについていかなくても大丈夫だからね。
 それでも、こんな便利なものを使わずにはおれない、っていう人は、無理せずに買って、無理せずに使いましょう。CPUがなんのことやら分からなくったって、電子メールは読めるんです。そういうものなんです。技術者だって日夜、そういう風に「訳は分からないが便利だ」ってものになるように頑張っているんですから。軍服に体を合わせる時代は終わったのですよ。

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