結局、IT産業とかいっても肉体労働であることに代わりは無いのである。徹夜が続くとみんな廃人になっていくに決まっているわけだ。
なぜならみんな人間だから。
扱っているものがコンピュータだったり、24時間不眠不休なメディア=インターネットだったりするが、それを操作している人間は高度な自動化のなされたプログラムでもなければ、高速伝達される光ファイバーでもない。
つまりなにがいいたいのか、と言うと
そんなに働けるか!ということである。
なにもこれはご当地・福岡のハイテク産業が県知事の無能さによって人材不足に陥ったとかいった平和な話ではない。なぜなら今回の徹夜は東京から来た仕事のせいだからだ。あんなにたくさんの人がいる大都会でも間に合わない仕事ってなんだ?おかしくないか?
日本のIT産業の特徴はずばり慢性的な人材不足にある。正確に言えば、この職種を希望する若い人材にはこと欠かないが、実際に相応の技術力を持った人は少ないという点が大問題なのだ。かくゆう自分もそれほどたかい技術力を誇っているわけではないが、これ以下の人々がうじゃうじゃ集まっていたって駄目なのだ。
当然の理論だが、技術力は努力で手に入るものである。努力を惜しまない若者も多い。だが悲しいかな、教える人が誰もいないし教える暇もこの国にはないのだ。例えば僕が僅かに持っているノウハウというものを、誰に伝える暇も与えられない。僕が風邪で倒れたら僕が作ったコードは誰も直せなくなり、つまりそのプロジェクトが停滞する。逆に、必要とあれば東京まで飛んでコードを直さなくてはならない。僕の身代わりを果たせる人物(これを仮にクローンと呼ぶ)がこの世のどこにも存在しないから、結論人材不足なのだ。
クローンを育てる努力が足りないのかも知れない。だが、「人にモノを教える」という行為をした事がある人ならば誰でも知っていることだが、人にモノを教えるには教えるモノの更に数倍の知識が必要になる。僕がHTMLで人に何かを教えられるとしたら、僕はHTMLの全てに精通しているばかりでなく、HTTPプロトコルの特徴(クセ)やブラウザのバグ、プラグインについて、果ては今後の展望についても知っている必要がある。もしもそれらのことを分からずにHTMLの何たるかを説明したらば、必ずそこには重大なミスが発生するだろう。
実際、いろんな人が「ホームページの作り方」を訊きに来るが、とても僕には説明しきれない。そもそもホームページが何をしているものなのか、その技術の全てを説明しなければ、真の意味で「ホームページの作り方」を説明したことにはならないように思うからだ。大抵、そんな深いところまで説明できるものでもないし、だれもそんな講釈を期待してはいない。だからあまり深いところは教えない。よって育たない。これが実態なのだ。
さて、そうやって人材不足のIT産業は、華々しく見えて実態はこんな疲れたサラリーマンのような大学生を製造しているのだ。これでも新しい産業なのか?これがこの国を支える産業なのか?政府のお偉い方々はインパクなる珍妙な企画を立てる以前に考えることがあったのではないか?
ま、いいか。インパク。結構儲かりそうでして。