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吉田美奈子「LIBERTY」の巻(1999/12/08)

 ふとしたときに、どうしても「GRACES」という曲が聴きたくなった。高校時代にFMから流れてきた曲で、力強い歌声が印象に残っていた。うろ覚えな記憶であったが、アーティスト名の吉田美奈子までちゃんと覚えていた。中古CD屋を巡って、ようやく見つけたのがベスト盤だった。
 ジャケットの裏には、レコード会社が製作したものでアーティストは関係ない、といった主旨の但し書きがしてある。なるほど、吉田美奈子はベテランのアーティストで、自分の作品に関して諸々の主張があるだろうが、このCDはそういったものから産まれたものではない、ということだ。早い話が契約が切れるのでレコード会社が出してしまった、といったところか。
 アーティストにしてみれば、作品の焼き直しなだけで全く好ましくない好ましい形のベスト盤なのかもしれない。しかし、僕はしがない学生である。何枚もある吉田美奈子作品を全て揃えるのは不可能だし、第一彼女の曲をそんなに知っているわけではない。そんなときにベスト盤は便利だ。卑怯なまでに。
 さて、「GRACES」は名曲であると分かっていたので、かなり油断してCDを掛け始めたのだが、その1曲目で椅子から立ち上がってしまうほどシビれた。それが「LIBERTY」である。
 R&Bなるジャンルが安売りされている日本のポップス界であるが、この人の歌声を聴いた瞬間、その全てが冗談のように思えてしまった。すでに日本にはこの歌声があったのだ。わずかピアノと吉田美奈子の歌声のみで聴かせてくれるのは、本物のブルース。しびれた。
 時々、これだ!という曲を聴いてトランス状態に陥りたくなるときがあるが、最近ではこの曲を聴いてトランスしている。素晴らしい声、迫力。
 なかなか「本物」に出会えないでいる方にはお勧めの曲である。あまり簡単に手に入らないと思うが、ぜひ探して聴いて欲しい。

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