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第13回「3D」(1998/09/14)

これからお話することは、極めて極秘に入手した情報であり、これが世に知れたらコンピュータ業界のみならず、人類の文化・文明の発展に影響を及ぼしかねないことを、あらかじめ断っておこう。

昨今の3Dビデオカードと呼ばれるビデオカードの進歩はすさまじい。CPUの進化、とりわけFPUの性能が上がったことで、パソコンレベルの電算機でもリアルタイムで3DCGが描けるようになったことが要因であろう、時代は3Dを要求しているのだ。
Microsoftは自社のOSにオリジナルの3Dライブラリを追加した。世に言う「Direct3D」である。このライブラリをハードウェアでネイティブに対応するビデオカードが、現在し烈な争いを続けている「3Dビデオカード」である(実際には2Dの機能、つまり従来のVGAなども兼ね備えているものも多い)。
「DirectX」のバージョンは現在6である。この進化に合わせてビデオチップを作っている会社は最新チップを作る。マッピングに関する命令が追加されたらそれを、Fog(霧)に関する命令が追加されたらそれをチップに反映させて、如何に早く表示させるかを競ってきたのだ。
大方、3DCGに必要な命令は最初から用意されていた。追加されていく命令は傾向として特殊な条件における現象の再現、つまり反射、半透明といった微妙な表現であったり、霧や雲といった「自然現象」の表現である。

この傾向が発展し、現在ペンタゴンがMictosoft、Number9と文書ベースで協議を進めている企画に「気象可視化ライブラリ構想」がある。雨、雪はもとより雷、台風、竜巻、雹(ひょう)、霰(あられ)(ヒョウとアラレは厳格に区別されており、アルゴリズムの一つの流用も許されない)を全てライブラリに追加、ハードウェアで対応させるという壮大な計画である。
ところがこれに先んじることわずか3日、日本では気象庁、文部省、NTT、そして某大学による研究チームが「環境シミュレートシステム・無情Ver.1A」を発表していた。これは「美しい日本語表現を守る会」が提案した教育用プログラムを発展させたWindows95ベースのソフトで、うろこ雲、いわし雲、積乱雲、飛行機雲といったさまざまな形状の雲を表示するだけのソフトなのだが、夕焼けフィルタ、湿度コントロール、経度緯度高度登録スライダーにより複雑な変化を見せる。特徴的なのは「一句ボタン」で、画面上に表現された雲を含む画像をコンピュータが評価、適切な一句を読み上げるというものだ。ちなみにその場合の音声は銀河万丈、野沢那智、榊原良子といったベテラン声優からオーディションによって選ばれた15歳の少女の声まで様々だ。

話が横に逸れてしまったようだ。本題に戻そう。
一方のチップメーカーの方も技術の探求に余念がない。3Dの膨大な計算を如何にして処理するか、並列処理、メモリへのアクセス速度、チップのマイクロ化は無論だ。ある雑誌記者の情報によれば、次世代ビデオカードにはMMX Pentium233MHz相当のCPUが実装されるらしい。無論、3Dに関する命令に特化した、であるが。
また、カード自体のマルチメディア化も進んでいる。おりしもSound Deviceの3D化(AC−3など)も進んでいるが、画面との完璧な同期を考えれば、同じ3D空間は同じデータを共有すればいいわけで、ビデオカードにスピーカー端子が付くのは至極当然といえる。そうなるとサウンドカードが要らなくなるわけだが、多くのゲーマーはサウンドカードのジョイスティック端子を使っているので、それを補う必要がある。
つまり次世代ビデオカードはMMX Pentium233MHz、メモリ32MB、Sound Blaster Pro互換、Line in、Line out、Mic端子、ジョイスティック端子が付くわけで、後はディスク類とキーボード・マウスが付けば立派なパソコンになってしまう、というわけだ。

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